top of page

"Song in the Air ~10Hzによせて~"

さて、なにを書こうか・・・・・・実はまだ上手く纏まってないんだよね

とりあえず、順にいこう
そもそもの「10Hz」ってタイトルから

「10Hz」ってのが果たしてどれくらいのものなのか?
人間の可聴域は20~15,000 or 20,000Hzまでらしい
実際には聴覚の差は結構でかくて10Hzが聴こえたり、超高音域も分かる人がいるらしい(ちなみに10Hzの大きさはここで分かる http://bit.ly/9e0yvX 低音域は聞き続けると内部障害が起きる可能性もあるんで、お気をつけて)

つまり、10Hzは一般の人(俺もそう)だと聴こえない音域
目の前に満ちる光、空間を飛び回る俺らと同じ原子、放射線もそうだし、幻肢痛と同じ「なにか」

ただそれはドルフィーが言ったみたいに音楽でも同じ
"When you hear music, after it's over, it's gone in the air. You can never capture it again." ってこと
彼女みたいな唄だってそう、歌い終わってそれが空に消えたあと、さっきの唄を俺たちは二度と聴けない

聴けない唄、見えないもの、会えない人、10Hzって存在も含めてそういった「とうめい」な何かは、とても遠くてひどく近い
それらは二度となにも出来ないから、俺たちはそれに近づけはすれど触れることはない

さて、彼女は路上ライブもやってて、そこに言った人は分かるかもしれないけど、このCDには最近の曲がない
一番近くて「星の川(Tarajan)」かな?

言っちゃえば寄せ集めの曲たち、だから「10Hz」っていうタイトルに対してある意味ではバラバラだし、纏まってもいる

っていうか、ここまでのレビューで気になってるだろうけど、何かあやふやな表現ばっかだ
何故かって言われると、彼女の唄は言葉数少ないんだけど情報量が多い(少ないからこっちがそれを埋めようとするのかもしれない)、だから含む意味が増えて、結局「ああであり、こうでもあり」みたいな感想になる

Twitterでレビュった1曲目「星の川(Tarajan)」からしてもそう、根元にあるのは彼女の死生観
そこから生まれるどうしようもなさ、「死ねない、生きてしまう、死にたくて、誰かを殺す」
あと、「本能で生まれてきてしまう俺ら」
サビで連呼される「川」は昔から生と死のイメージとして基本
大きい川は渡れず、無理に渡ろうとすれば命を落とし、渡った人には会いに行けず、そこで断絶する
イントロから始まる川はゆっくりと流れ、時に傷つけ、暴れ、そしてゆっくりとより大きなところへと還る
ビートルズの「I am the Walrus」やインド仏教の「大いなる流れ」みたいな感覚に触れたような触れないような、その辺りは知らない

2曲目「ルナのテーマ(speaker)」、3曲目「UO(uo no me)」が二通りの意味で10Hzって表現にいちばん近いと思う

ものすごい間を取った、ぽろぽろと鳴らされるアコギと呼吸するように放つ唄、変化するサビの歌詞、彼女の表現としての「10Hz」、「ルナのテーマ(speaker)」
おそろしく小さい声、削りすぎた言葉、実は一番多彩に鳴る音たち、海の底、くらい感じ、彼女のイメージとしての「10Hz」、「UO(uo no me)」

この2曲には彼女の表現としての唄がそのまま転がってる
よく聴こうとして耳を澄ますと、君の周囲の音やスピーカーのノイズが入ってくる
それはジョン・ケージみたいな偶然性の音楽でもある
この2曲はとてもやわらかい、だけどそれ故に僕らの価値観を拒む
utacoとしての世界がそこにあって
混じることを拒んでいる

4曲目「黒い牧場」彼女の言葉によると「絵を描くような唄」、途切れ途切れのメロディーが声が、ただ君の目に映るように
ちなみに「ぼくじょう」じゃなくて「まきば」なんだって。個人的にはたしかにそんなイメージ

ラスト「海の子」今回のCDのmixを手がけたカイさんのピアノが彼女の唄のメロディーに光を当ててる。最後に言うけど、彼女の声は凄く個性的って訳じゃないけど、凄く不思議
たぶんビックバンドの中で歌っても、ノイズにまみれても、いつもの唄でもきっとこの声は同じように響くんだろうな、とそう感じてしまう

そして、その声でむき出しにされているのは彼女の恐怖

そもそもが「搾り出す」って言う彼女の唄は、絶対に彼女の本音を歌わない
思考と感情は言葉に変え、音に変え、CDに落とし、ある種の不変になった時点で自分じゃなくなる
ただそれでも、それらは位置を示す
彼女の中から「いま、ここ」に落ちた、って

utacoちゃんに限らず、俺も君もこころに言えないことがあるし、それは伝えられないから誰かと共有できない
だから、俺たちはとてもさびしくなる
「でも、それでも・・・・・・・」ってのが彼女の唄
「10Hz」はきっと誰にも聴こえない彼女の唄の周波数
それを実は聴こえる人がいるのかもしれない、でもそれを聴き続けて、浴び続ければその人は傷つく、深く重く

彼女がこれからいつまで歌うかは知らない
でも、いま彼女は一つの形を見せた、聴こえないところから搾り出したいくつかの塊、空中に放たれたうた

それらは二度と掴めないけど、君の中に何かを残すはず
彼女の「10Hz」に君の「なにか」が共振したら
彼女に「イイ」「良かった」って言ってあげよう
それはきっと彼女にとっても、君にとってもうれしいことと思う


ちなみにこのレビューのタイトルはコレ(http://youtu.be/EqGPloiP8D8)から

Review by Kei  29.April 2012 16:37

  • Kei Twitter
  • kei tumblr
bottom of page